篝に火が点されると、いよいよ出漁、花火の合図とともに出発します。
鵜匠たちは狩下り(かりくだり)をしながら、瀬のあるごとに舟の位置を変えていきます。 これもすべての舟が平等に鮎を獲れるようにと考えられた昔からの慣習です。

鵜匠は左手で12本の手縄を操り、右手でその1本1本をさばき鵜たちが鮎を獲りやすいように誘導します。 鵜は次々に鮎を呑み込み、のどもとのふくらみを目にした鵜匠が鵜をたぐり寄せ、片手でのどを押さえてもう一方の手で獲った鮎を吐籠(はけかご)に吐かせます。次の瞬間には鵜は川に放たれ、再び鮎を追い始めます。
こうしたことが一晩のうちに何度も繰り返されて、鵜飼漁は進められます。

鵜たちは、獲った鮎すべてを搾取されるわけではありません。締め方を調節された首結のおかげで、小さな鮎はのどを通り胃の中に入るように加減されています 狩下りが進むといよいよ鵜飼のクライマックス、「総がらみ」が始まります。 整然と並んで狩下ってきた6艘の鵜舟が、一体となって鮎を浅瀬に追い込んでいく様は壮観のひとこと。
鵜匠の「ホウホウ」と鵜を励ます声や、とも乗りが舟べりを「ドンドン」とたたく音が、暗闇に浮かぶ篝火とともに幻想的な雰囲気をかもしだし、ひと夜の古典絵巻を描き出すのです。

漁がすむと、鵜たちはやっと一休み。舟べりにとまって休憩します。 そのときも、並ぶ順番が決まっているというから驚きです。
とも乗りたちには、漁の後始末が待っています。獲れた鮎は市場に送るためすぐ処理し道具の後片付けをするとやっと1日の漁の終了。もう真夜中も近くなったころのことでです。