鵜の生態
野生の海鵜が2~3年かけて一人前に

野生のウミウ

鵜とは、ペリカン目ウ科に属する水鳥(みずどり)で、世界中には40種類ほどが生息しています。そのなかで、日本に棲んでいるのは、主に海鵜(うみう)と川鵜(かわう)です。鵜飼に使われるのは海鵜。なぜかというと、体が大きく力も強いうえ、我慢強くて比較的おとなしい性格だからです。
  鵜匠の家には、いつも20羽前後の鵜が飼われています。鵜飼では2羽でペアをつくって漁をするため、その2羽どうしは仲がよく、ほかの鵜が近づくと喧嘩になることがよくあるとか。ただし、オス・メス の区別がつかないため、ペアの鵜が夫婦であるとは限りません。昼の間は鳥屋(とや)のなかで放し飼いにされているので、見学に行くならこのときを選ぶといいでしょう。鵜飼のあるときは、その日の鵜の体調などをチェックして鵜飼に連れて行く鵜と行かない鵜に分け、ペアになっている鵜2羽ずつを鵜籠(うかご)に入れていきます。鵜飼に連れて行かない鵜には、このときに餌を与えます。

鵜飼に連れて行く鵜は空腹のまま漁に臨みます。鵜の食事は1日1回、主に冷凍のホッケなどが与えられます。鵜飼シーズン中は、餌の量を少なくして、漁に行く前にはいつも空腹の状態にしているそうです。これも鵜にしっかり鮎を獲ってもらうため。漁が終わるとちゃんと食事が 与えられるのです。鵜飼で使われる鵜は、すべて茨城県日立市で捕獲されています。この地で捕獲された野生の鵜は、冬の間に鵜匠のもとへ送り届けられます。鵜匠の家に着いた鵜は、風切り羽が7、8本切り取られ飛べないようにされると、いよいよ新しい生活の始まりです。鵜匠のもとで2~3年ほどの訓練を受けて、やっと一人前となるのです。

長良川の鮎
香魚としてその名も高い長良川鵜飼のアユ

長良川のアユの友釣り

アユは、キュウリウオ目アユ科に分類され、川と海を回遊する魚で、成魚では30cmほどに成長します。秋に生まれ約1年で一生を終えるため「年魚(ねんぎょ)」とも呼ばれるほか、川床(かわどこ)のコケを主食とするため香りがよく、「香魚(こうぎょ)」の名で呼ばれることもあります。秋、川で生まれたアユは、間もなく海へと下り冬の間を海で過ごします。春になると川を遡上し始め、川の中流や上流にたどり着き、川床のケイソウ藻などを食べるようになります。この石などについた食べ痕は「はみあと」と呼ばれています。その頃になると、餌場を独占するため「なわばり」をつくります。この習性を応用したのが「友釣り」です。

鵜の歯形がついた鮎

秋になり成熟したアユは「落ちアユ」となって川を下り産卵…、こうして短い一生が終わります。清流・長良川で育ったアユは全国的に有名で、アユ漁が解禁されると、長良川は釣り客であふれます。友釣りや漁で揚げられたアユは、美味を求め る美食ファンの間でもてはやされています。そのなかでも鵜飼で獲れたアユは、特に貴重なものとして名を馳せています。鵜が獲ったアユにはくちばしの痕がついており、「歯形のアユ」とも言われています。アユが瞬間にショック死するため鮮度も抜群で、味も最高級な希少価値の高いアユなのです。